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飯田大火から70年

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 終戦から間もない1947(昭和22)年4月20日、連日の好天で桜の開花が進み、権現堂や今宮神社など当時の桜の名所には、咲き誇る美しい花に誘われ、花見を楽しむ多くの市民の姿があった。そんな穏やかな春の一日が、突如として悲劇の一日に変わった。

 午前11時40分、上常盤町(現扇町)の民家の煙突の火の粉を原因に火災が発生。飯田測候所観測以来の乾燥と平均風速10メートルの南風にあおられ(当時の報道から)、火の手はわずか数時間で桜町、吾妻町鈴加町、宮の前、高羽町へと広がった。

 「飯田大火」として深く記憶と記録に刻まれたこの火災の罹災(りさい)面積は、60万平方メートルで、当時の市街地の約8割に上った。罹災戸数は3577戸、罹災世帯数は4010世帯。罹災人員数は当時の人口の約53%に当たる1万7771人と、かつてない甚大な被害をもたらした。また、死者は1人、行方不明者2人、重傷者は80人。損害額は当時の金額で推定15億円とされる。

 予想を超える規模と延焼の早さに、多くの市民が家財を持ちだすことができず、焼け野原から裸一貫での復興を余儀なくされたという。

 近年、市街地の大規模火災として記憶に新しい、2016年12月の糸魚川市大規模火災の焼損面積は約4万平方メートルで、被害建築物は147棟。燃え広がる火災映像がいまだ鮮明なだけに、その数字から飯田大火のすさまじさが伝わる。

 15日に開かれた飯田大火70周年記念講演会で、飯田市美術博物館の櫻井弘人学芸員は、大火によって歴史的な町並みや史跡、文化財、伝統的な暮らしぶりなどを失った一方で、近代都市的な町並みや公共施設、りんご並木や裏界線などを得たと指摘した。

 飯田東中学校生徒の熱意が行政を動かし、1953(昭和28)年に誕生したりんご並木は、飯田大火復興のシンボルであるとともに、現在では飯田市のシンボルとして広く親しまれている。また、延焼防止と避難経路の確保のため各戸が土地を出し合い整備した裏界線は、防災機能にとどまらず、その趣を生かした地域活性化にも一役買っている。

 昨年11月、行幸啓でりんご並木を訪れた天皇陛下は、翌月の誕生日に際しての記者会見で、「災害復興を機に、前より更に良いものを作るという、近年で言う『ビルド・バック・ベター』が既に実行されていることを知った」と述べられた。この言葉からも、大火後の飯田が得たものの大きさを感じられる。

 櫻井さんはまた、「飯田大火は飯田の町を大きく変えた大災害」と、語り伝えていくことの大切さ、思い起こさせる仕掛けの大切さ、教訓として記憶していくことの大切さを強調する。

 15日夜、飯田大火の出火元となった橋南地区では、「大火の教訓を忘れず、二度と大きな火災をださないように」と、住民が地区内を歩いて回り「火の用心」を呼び掛ける防火活動「おひまち」を実施した。飯田市消防団第1分団、橋南連合青壮年会が主催。追手町小学校の児童をはじめ、同校PTA、公民館、育成委員会など、総勢約100人が参加し、拍子木を打ちながら「火の用心」の大きな声を地区内に響かせた。

 おひまちに合わせ、追手町小学校の児童に防火標語の作成を依頼。同校では標語の作成にあたり、授業で飯田大火の概要や歴史を児童に伝えた。

 この日は、大火を経験した、同市銀座のツノダ会長、角田俊實さん(86)の姿も。角田さんは児童や保護者らと地区内を歩きながら「大火を経験した人も減ってしまった」と感慨にひたった。

 大火当時、高校3年生だった角田さんは、「よくもこれだけ燃えたなぁ」という記憶が真っ先に浮かぶという。「あっという間に燃え広がり、皆、家財道具を持ち出すことが出来なかった。避難しようと家の外に出した物も、結局運ぶことが出来ず燃えてしまった」と振り返る。自身の家は商売をしていたため、客からの預かり物だけを持って逃げたという。

 「あんな火災は二度とごめん」。経験者の言葉が重く響く。

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