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社説:敬老の日 長寿を喜べる地域社会こそ : 京都新聞

 100歳以上の高齢者が約7万人と過去最多となった。長生きする人が増えることは歓迎すべきことだ。長寿を喜ぶとともに、地域でどう支え合うか考えたい。

 今年、日本の人口構造は新たな局面に入った。

 75歳以上の後期高齢者が1770万人で前期高齢者といわれる65~74歳の人口を初めて上回り、高齢者全体の半数を超えた。総人口に占める割合は65歳以上が約27%、うち75歳以上は約14%に上る。

 一方、昨年の子どもの出生数は調査開始以来最少となり、2年連続で100万人を割り込む。

 定年制や還暦の祝い、年金支給…。過去の日本人の制度や社会慣行は「人生ほぼ60年」を前提とした枠組みだったと言える。

 だが今や平均寿命は男性81・09歳、女性87・26歳だ。介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間を示す健康寿命も男性72・14歳、女性74・79歳と3年前の前回調査より延びた。

 医療の発達とともに元気な高齢者はますます増えるに違いない。

■生涯現役社会が加速

 日本老年医学会は昨年、高齢者の定義を75歳以上に見直すように提言した。この年齢を過ぎると寝たきりや認知症など心身が衰えやすくなる。

 社会保障制度や関連施策の前提条件となる人口構造が変わってきたのだ。ならば制度の在り方も根本から見直す時期に来ている。

 政府は、戦後間もないベビーブーム期に生まれた「団塊の世代」全員が後期高齢者になる2025年に向け、「社会保障と税の一体改革」を進めてきた。

 一連の改革は19年10月の消費税10%引き上げで一段落する。だが、社会保障費の膨張が国と地方の財政を圧迫している。

 持続可能な医療、介護制度の構築が課題だ。どの世代も安心して明日を生きる確かな青写真を国が示さないから国民は不安なのだ。

 もはや増税と借金だけで賄うのは限界だろう。医療費の伸びを自動調整する仕組みを導入し、自己負担を現在の年齢別から負担能力に応じた方法に改めるといった抜本的な見直しが求められる。

 「人生100年時代」と言われる。生き生きと高齢者が働ける生涯現役社会を加速させたい。

 65歳以上の働く人は約800万人いる。その一方で、希望しながら職につけない人も多い。

 政府は65歳の雇用継続義務づけ年齢を70歳までに見直す方向だ。人事院も国家公務員の定年を65歳に引き上げることを提言した。

 定年後の選択肢が広がることは歓迎できよう。だが、収入が増えると年金が減る在職老齢年金制度は働く意欲をそぐとの批判も根強い。制度再考が急務だ。

 第二の人生で起業を目指すシニア層への支援も検討すべきだ。

 高齢者の意思や能力、経験を生かす環境を官民挙げて整えたい。社会参加を促すため生活の質を落とさない仕組みも不可欠となる。

 一方、住み慣れた地域で暮らし続けたい高齢者をしっかり支えていかねばならない。医療・介護現場ではマンパワー不足が深刻だ。

■包括ケアで寄り添う

 そこで期待されるのが各市町村にある地域包括支援センターだ。都市部と山間部では活動に格差もあるが、地域のネットワークづくりやITの活用が鍵となる。

 高齢化率45%の京都府南山城村では村内唯一の診療所を運営する相楽医師会が「顔の見える関係」を第一に、出張診療や介護事業所との連携を重ね、患者中心の包括ケアを実践している。

 東近江市のNPO法人「三方よし研究会」は医療・介護など多職種が患者に切れ目なく寄り添い、症例について車座で意見交換、情報共有を続ける。関係者は「認知症やがんになっても地域で安心して住み続けられることを目指して地域包括ケアを進められれば、それがまちづくりになる」と力強い。こうした事例も参考に体制整備やノウハウの研究を進め、高齢者支援充実へ知恵を絞りたい。

 理想とするのは、年齢を重ねるほど輝きを増し、笑顔が絶えない長寿社会だろう。

 先日「人生100年 心豊かに健康に」と題した84歳女性の投稿が本紙の窓欄に掲載された。「老いてこその青春と趣味をつくり、友の輪に入り、年齢を重ねたい」とつづられていた。

■老いても青春楽しみ

 小説家の故伊藤整氏は「人生は自分の後方でなく、前方に全部未開発で残っている」と自著に書いた。人生を振り返る視点に立てば今が一番老けているが、これからの人生に思いをはせる視点に立てば何十歳だろうが、今が一番若いのだ―と。

 敬老の日は、兵庫県の旧野間谷村が1947年に開いた敬老会が起源だ。当時30代の若手村長だった故門脇政夫さんが提唱した。「戦争で苦労したお年寄りを敬う日を」と55歳以上の村民を小学校に集め、食事と余興でもてなした。存命中、門脇さんは周囲の人にこう繰り返していたそうだ。「お年寄りは大事にせないかん」。その思いを今一度かみしめたい。それが、誰もが暮らしやすい健康長寿社会づくりへの第一歩となる。

[京都新聞 2018年09月17日掲載]

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